目的論という生き方
今回は、「嫌われる勇気」が大変面白かったため、本文の中で特に面白いと思った考え方を紹介したい。
突然だが、原因論と目的論という言葉をご存知だろうか?
僕は「嫌われる勇気」の中で初めて目にした言葉であった。言葉を知らなくても、僕を含めおそらく大部分の人が、この原因論で言われている生き方をしていると思う。
原因論について、本文に書かれている例を参考にしながら紹介する。
例えば、現在引きこもり中の人がいるとする。原因論は、この人が引きこもりになったのには、何か原因(いじめ、両親とのトラブル等々)があった結果であるとする考え方である。つまり、現在起こっている現象には、何かしらの前段があり、その結果としての“今”があるとの考え方である。
非常に分かりやすい考え方であるし、僕たちが普段慣れ親しんだ考え方である。しかし、原因論には、いくつかのピットフォールが存在するという。
例えば、「僕たちが思い出すことのできる僕たちの記憶」は、僕たちが思っているほどあてにならないということだ。
僕たちは自分の現状を正当化させるような面を優先的に思い出すし、逆に自分たちに都合の悪い面は思い出さない・思い出しにくいようになっている。先の例で言えば、引きこもっている方は、自身が引きこもらざるを得なくなったと考えることのできる出来事を優先的に思い出すこととなる。(引きこもりは全て自分のせいであるとするつもりはないこと、引きこもりの方は自分を正当化する傾向がある考えている訳ではないことには注意していただきたい。)
次は、目的論について説明をさせてただく。
先の現在引きこもり状態の方を例に、目的論について、本文では以下のような説明がされている。
「外に出ない」という目的が先にあって、その目的を達成する手段として、不安や恐怖といった感情をこしらえているのです。(「嫌われる勇気」から引用)
「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショックーーーいわゆるトラウマーーーに苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである。」(「嫌われる勇気」から引用)
つまり、私たちが置かれている現状について、それは何か原因があったからではなく、意識的にしろ、無意識にしろ、自らが何らかの“目的”を達成するために選択をしたためであると考える。
突然だが、ここで少しだけ僕の話をしたい。
僕は地元の進学校に通っていたが、勉強はあまり出来の良い方ではなかった。その頃、周りの出来良いクラスメイトと自分の差を直視せず、「あいつらは元々頭の良さが違うから」とか「良い塾に通っているから」等々言い訳ばかり考えていた。思えば、その頃から、“敗者のメンタリティー”を熟成させていったのだと思う。
また、最近の話しだが、SNSを見れば成功者達があふれ、自分の凡庸さに打ちひしがれており、たまに高校時代の友達と会えば、開ききった差に愕然とし、盛りに盛った自分の最近の出来事を話し、なけなしのプライドを守っているような状態である。
そして、「まぁあいつらは元々の頭が良いだけだから」と高校時代から何も変わらない事を考えている。
「嫌われる勇気」には、そんな僕読むと心が痛くなるような言葉の数々が書いてあった。気に入った文章の中から、少しだけ紹介をしたい。
たとえば先ほど、あなたは「もしもYのような人間になれたら、幸せになれる」といいました。そうやって「もしも何々だったら」と可能性のなかに生きているうちは、変わることなどできません。(「嫌われる勇気」から引用)
過去がすべてを決定し、過去が変えられないのであれば、今日を生きるわれわれは人生に対してなんら有効な手立てを打てなくなってしまう。(「嫌われる勇気」から引用)
どこかで聞いた言葉だが、「人はあきらめる理由を語りたがる」生き物らしい。凄く納得のいく言葉だ。
本著を読んで行くと、僕が今の僕であるのは、僕がこれまで選択して行った結果であり、他の誰か・何かの責任ではないこと、これからの人生においても、自分の目的・選択を自覚することでしか、自分の人生を転がすことができないということを、考えさせられる。
漠然とでも、何かを変えたいと思う人は、本著がおすすめである。今日紹介したこと以外にも、「対人関係について」「課題の分離について」など、考えさせられるトピックが載っている。
※「嫌われる勇気」のオススメの読み方は、“でも”・“だって”と考えず、哲人の言葉を一回お腹の中に入れちゃうことだと思います。
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